の間へ這入り、尚も詳しく調べていた。私はその大胆さには全く敬服して仕舞った。
その中《うち》に夜も白々と明けて来た。
やがて松本は死体の方の調査がすんだと見えて、奥の間から出て来たが、私が側に居るのに目も呉れず、今度は居間の方を見廻した。私も彼の目を追いながら、いくらか明るくなって来た窓を見廻すと、気のついた事は隅の方の畳が一枚上げられ、床板《ゆかいた》が上げられていた。松本は飛鳥《ひちょう》の様にそこへ飛んで行った。私も思わず彼の後を追った。
みると床板を上げた辺に一枚の紙片《かみきれ》が落ちて居た。目敏《めばや》くその紙片を見つけた松本は、一寸驚いた様子で、一度拾おうとしたが、急に止めて今度はポケットから手帳を出した。私はそっと彼の横から床の上の紙片を覗《のぞ》き込むと、何だか訳の判らない符号みたいなものが書いてあった。それに彼の手帳を見ると、もう紙片と同じ符号がそこに写されているではないか。
[#紙片の図(fig1429_01.png)入る]
「やあ、あなたでしたか?」私の覗いているのに気のついた松本は、急いで帳面を閉じながら云った。「どうです。火事の方を調べてみようじゃあ
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