がめをうけずにすむわけである。
 ×月×日
 おれは予定どおり大学をやめた。郊外の研究室の工事も着々すすんでいる。おれははじめ邸内の一部に研究室をたてようとおもった。そのほうがSをたびたび招いたりするのに都合がよいのであるが、いかに巧妙にいっても、人目のおおい市内では、おれの計略を見やぶられるおそれがあるから、不便な郊外をえらぶことにした。
 ×月×日
 とうとう研究室ができた。研究室の秘密については、おれは都合のよい人間をしっていたので、絶対に他に洩れる心配はない。設計施工をやった人間は、研究上必要だと信じているのだ。まさかおれが殺人をする目的で、こんな装置をしたとは思っていない。
 ×月×日
 研究はいよいよ蜘蛛ときめた。はじめは蛇にするつもりだったが、蜘蛛類にも猛毒なものがあるからそれを利用することにした。
 ×月×日
 今日深夜ひそかにテストをしてみた。しごく成績がよい。おれがはじめ心配したのは回転速度だった。いったい吾人は等速運動をしている時に、ほかに比較すべきものがなければぜんぜん意識しないものだ。下等動物のうちには、ほかに比較すべきものがあっても平気なものがある。たとえば
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