がめをうけずにすむわけである。
×月×日
おれは予定どおり大学をやめた。郊外の研究室の工事も着々すすんでいる。おれははじめ邸内の一部に研究室をたてようとおもった。そのほうがSをたびたび招いたりするのに都合がよいのであるが、いかに巧妙にいっても、人目のおおい市内では、おれの計略を見やぶられるおそれがあるから、不便な郊外をえらぶことにした。
×月×日
とうとう研究室ができた。研究室の秘密については、おれは都合のよい人間をしっていたので、絶対に他に洩れる心配はない。設計施工をやった人間は、研究上必要だと信じているのだ。まさかおれが殺人をする目的で、こんな装置をしたとは思っていない。
×月×日
研究はいよいよ蜘蛛ときめた。はじめは蛇にするつもりだったが、蜘蛛類にも猛毒なものがあるからそれを利用することにした。
×月×日
今日深夜ひそかにテストをしてみた。しごく成績がよい。おれがはじめ心配したのは回転速度だった。いったい吾人は等速運動をしている時に、ほかに比較すべきものがなければぜんぜん意識しないものだ。下等動物のうちには、ほかに比較すべきものがあっても平気なものがある。たとえば
前へ
次へ
全25ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング