だそうと焦った。私は辻川博士の秘密が知りたかったのである。この研究室のどこかに辻川博士の秘密が隠されていると信じたのである。
まるで狂ったように荒れまわっていた私は、とうとう書架のうしろの秘密の隠し場所から、故辻川博士の日記を発見した。私はふるえる手でバラバラとページをくった。そうして、私はやはりそこに博士の秘密を見出したのだった。
* * *
×月×日
Sを殺そうと決心してから三ヵ月になる。このごろになってようやく一つのプランを思いついた。Sを殺さなければならない理由は、まったく主観的のもので、おれは良心を安んじさせるためにジャスチファイする必要はないと思う。おれは世間をあざむけばよいのだ。良心をあざむく必要はすこしもない。
おれはSを殺そうという考えが、すこしでもにぶりかけたら、彼がおれに加えたかずかぎりなき有形無形の侮辱を思いだせばよいのだ。Sは二人だけの場合であると、公開の席であるとにかかわらず、諧謔《かいぎゃく》の仮面のもとに、おれをあざけり、おれを軽蔑し、おれを圧迫し、おれをののしりつづけた。このことは彼自身が意識していると意識していないと
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