人や、永辻のおかみのいう事がピッタリ会いますから」
「えゝと、信造は金曜日の朝、茅ヶ崎へ行くといってアパートを出たんだね。その目的ははっきりしないが、別荘で従兄弟の卓一に会う為らしいと管理人はいうんだね。それから、その夜九時から十時の間に信造は待呆けを食わされたといって、プン/\怒りながらアパートに帰って来た。一方、卓一は当日朝から出かけて、夕方帰って来て、急に信造との約束を思い出して、永辻にむりやりに自動車に乗せて貰って、茅ヶ崎に向った。信造らしい青年が三度茅ヶ崎駅から乗降したのは確実で、一方卓一らしき青年は一回も乗降しておらん。怪しい点は一つもないな」
「只一つ分らない点は、信造が八時頃東京に着いて、アパートに帰るまで何をしていたかという点ですが」
「そいつア別に大した問題でもあるまい。信造に聞けばいうだろうし――別に聞くにも及ぶまいて」
とこういう訳で、この事件はそのまゝになって終った。
それから四ヶ月ほど経って、急にポカ/\と暖くなった春の宵、望月刑事は別の事件で上京して、渋谷の道玄坂の通りを歩いていた。
ふと見ると、例の大きな盤を置いた連珠屋を取巻いて多勢の見物が群が
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