うも」警部は軽く頭を下げて、「もう警察の問題ではありません。ではどうぞ。後片づけをお願いいたします」
やがて警察の一行は引上げて行った。
二人の足取
警察署へ帰ると、榎戸警部は一行のうちに交っていた望月刑事を呼んだ。
「今日の事件は大体に於て怪しむべき点はないようだ。あの小浜信造という青年の説明した所によると、死んでいた北田卓一という青年は突飛な性格の持主らしく、夜中に友達の家に押しかけて、戸締りを破って這入るなどという事を平気でやる男らしい。死因も全く病気という事だし、之以上突つく必要もないと思うが、尚《なお》君、念の為、昨日と今日の信造と卓一の足取りを洗って見て呉《く》れ給え。当の信造にはもう何事もないようにいって安心を与えて置いたから、仕事はやりいゝだろうと思う」
望月刑事は命を受けて、先ず第一に茅ヶ崎の駅に出かけた。夏ならば兎に角、十二月という月では乗降客も少いので、駅員が覚えてはいないかと思ったのだった。
果して駅員は覚えていた。
昨日の朝十時三十三分着の下り列車で、鳶色の服を着た信造らしい青年が下車した。それから同日の午後六時三分発上り列
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