さ」
「成程恐い顔ですね。之が奥さんですか」
「そうだよ。そんなのが油断がならないのだよ」
眼の前の沢山の写真をいじくっていた岸本は、ふと一葉の写真に眼を落とすとあっと驚いた。
支倉一家の写真をいじくっているうちに、ふと一葉の写真に眼を落として、岸本はあっと驚いた。それは小林貞子の写真だった。
「どうしたの」
お篠は怪しんで聞いた。
「何、何でもないのです」
「おや、やっぱり若いのが好いと見えるね」
おかみは岸本の持ってる写真を見ると、ニヤリと笑いながら云った。
「そう云う訳じゃありません」
「お生憎さま、岸本さん、その娘はもう死んだよ」
「えっ、死んだんですって?」
岸本はギクリとした。
「大そう驚くね」
お篠はジロリと岸本を見ながら、
「確な訳じゃないが死んだろうと思うのさ。それは支倉さんの女中なんだよ」
「あゝ、女中さんですか」
「それがね、三年前に行方不明になって終《しま》ったのよ」
「へえ!」
「未だに分らないらしいが、まあ死んだんだろうね」
「そうですね、三年も行方が分らないとすると、死んだのかも知れませんね、どうして行方不明になったんですか」
「それがね、そ
前へ
次へ
全430ページ中79ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング