っている筈である。但し、こっちで油断していると思って、そっと運び出して知合の家にでも預けて置いて、気のつかないのを確めた後に受取にでも行く計画か、そんなら態とこっちも気がつかない風をして対手を油断させ、それとなく家を警戒していて、ノコ/\受取りに来る所を捕えるのが上分別である。何にしても直ぐに飛び込んで行くのは考えものだと思ったが、渡辺刑事が功をはやって聞き入れそうもないので、それはそれとして彼は支倉の宅へ出かけて見張っていたのだった。と云うのは手品師の右の手の動く時は左の手に気をつけよと云うように、荷物を運び出してその方に注意を向けようとしたとすれば、宅の方が怪しいと睨んだのである。果して彼の推察通り細君の外出となったのであるが、注意深い彼は細君を尾行する際に、も一人の刑事にちゃんと家を警戒させて置いた。荷物で釣出し、細君で釣出して、その留守に悠々と支倉が乗込むかも知れないと思ったからである。
根岸刑事は相変らず教会の前を往来《ゆきゝ》しながら考えた。
中野署に応援を頼むのも好いがその間に逃げられては何にもならぬ。踏込んで行くのには確実な証拠を掴まないと、殊に対手は外国人の家であ
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