は神楽坂署の署員が証人として出廷する事になっているので、支倉の運命を決する重大な裁判と云わねばならぬ。彼は例の自ら筆記した大部の書類を携えて被告席に控えていた。
 第一に出廷したのは石子刑事だった。支倉事件に関係した神楽坂署員のうち大島司法主任は既に支倉の訊問半にして斃れたが、当時老練の誉高く事件に活躍した根岸刑事は先年物故した。石子刑事は署長を除くと唯一の現存主要人物なので、裁判長の訊問も鋭く、殊に能勢弁護人の追究は物凄い程で、石子刑事は殆ど一人で神楽坂署の非難を引受けて終《しま》った形だった。
 彼は能勢氏から支倉拘引の前後の事情、自白に至るまでの経路につき勢い鋭く問い詰められた。石子刑事は白面に些か興奮の色を見せながらテキパキと答えた。死体発掘の模様から、髑髏の件になると能勢氏の面は愈※[#二の字点、1−2−22]熱して来た。
「警察には髑髏が二つあったと云うではないか」
 能勢弁護人は石子刑事を睨めつけるようにして云った。
「そんな事はありません」
 石子は眉をひそめながら答えた。
「いゝや、被告は確に髑髏を二つ見せられたと云っている」
「そんな事はありません」
「被告の妻にも
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