いがありますが、実は支倉が小林貞の事に関して、当時先生に差上げた書面が数通ある筈だが、それは自分に利益のある書面だと思うから全部お借し下さる事を願って呉れと申したのですが、いかゞでしょう」
「書面ですって」
神戸牧師の顔にはチラリと不快な影がさした。
「さあ、私も書面は一々保存はして居りませんが、当時支倉の寄越したものは残っていたかと思います。然し、それが果して彼に利益があるでしょうか」
「それは私にも分りませんが、兎に角見たいと申して居りますから貸してやって頂けませんでしょうか」
「貸す事は一向差支ありません。では鳥渡お待ち下さい。探して見ますから」
神戸牧師は立上って隅の本箱の前に行き、抽斗を開けて暫くゴソ/\と音をさせていたが、やがて一束の手紙を手にして、元の座に戻った。
「当時支倉から来た手紙は之だけ残って居ります」
神戸牧師は手紙の束を木藤の前に押し遣りながら、
「多分之で全部だと思います。私も後にこんな面倒な事件が起るとは夢にも思いませんでしたから、一々保存をして置かなかったかも知れません。之でお役に立つならどうぞお持ち下さい」
「そうですか。どうも有難うございます。
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