葉を切って夫の顔を見た。夫は妻の情なさそうな顔を見た。妻は明《あから》さまの溜息を、夫は腹の中で私《ひそ》かに溜息をついたのだった。
 支倉は果して控訴した。審理は又蒸し返しとなった。被告の都合や、弁護人の都合や、裁判所の都合で公判は延期に延期を重ねた。その中に一年は夢のように経って終《しま》ったけれども、裁判は少しも埒《らち》が開かない。
 裁判を遷延さす事はそれが弁護人の策略であるかのように神戸牧師には思えて仕方がなかった。裁判が延びるにつれて、被告の犯罪事実は調書に止《とゞ》まってはいるものゝ、だん/\印象が薄れて来る。証人も倦み疲れ、判官も熱心が欠けて来る。その間に乗じて弁護人が巧に働けば遂には証拠不十分と云う事に漕ぎつける事も出来るだろう。それだけに裁判を延ばされると云う事は、いつも証人として立たなければならない神戸牧師に取っては、苦痛の度が益※[#二の字点、1−2−22]大きくなるのである。
 五年も六年も前の出来事について、而も度々繰返した一つの証言を、又事新しく強いられるのは苦痛でなくてなんであろう。所が神戸牧師の苦痛はそれだけに止まらなかった。
 支倉は控訴後も無論未
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