る我子の寝顔を打守りながら、じっと物思いに沈んでいた。涙は夙《つと》に流し尽したので、涸き切った両方の瞼は醜く腫れ上っているのだった。今宵は特に薄暗く感ぜられる電燈がガランとした部屋の天井から、彼女の寂しい姿を照し出して、薄汚れた畳に影法師を吸いつかせていた。
蒸し暑い宵だった。
彼女が心の休む暇もなく、涙に暮れているうちに、世はいつの間にかもう夏めいていたのだった。一枚だけ明け放した雨戸の隙から型ばかりに吊ってある檐《のき》の古簾の目を通して、梅雨明けのカラリと晴れ上った空に一つ二つ星がキラめいているのが見えていた。
今年の二月計らずも刑事に踏込まれてから、凡そ半年足らずの間に何と不幸の数々が続いた事であろうか。彼女はその僅《わずか》ばかりの間に十年も年を取って終ったような気がするのです。
喜平との七年の結婚生活は夢のようだった。十九の年に双親《ふたおや》の勧めるまゝに、処女の純潔を彼に捧げてから今まで、必ずしも幸福に充ちてはいなかったけれども、彼女は夫に愛を持ちながら信仰の生活を続ける事が出来た。それに夫が彼女に対する愛情は、時に執拗、時に空虚に感じる事はあったけれども、並
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