ばよく分る。
順序として第二の上願書の事から始めよう。
第二の上願書は鳥渡述べた通り半紙五枚に細々認めたもので、先に引用したように、
「――電車開通しありとは意外、まるで夢のようです」
と言う言葉から始まっている。彼の筆蹟は中々達者なもので、誤字脱字等は甚だ稀で、書消した跡も殆どないのは、彼の教養の程度が伺われる。
[#ここから2字下げ]
「――神楽坂署で七日七夜刑事交代苛酷なる責折檻に遇い、殺害し居らざるものを殺害したと虚偽の事さえも真実らしく申立、裁判所へ送られ虎口を逃れ一安心と思いしは一生の誤り、電車は自分に取って致命傷にや。それもこれも尾島氏に余り面倒見て貰い過ぎ、聖書会社へ迷惑を掛けました神より自分に降した相当の責罰には、自分は今度冤罪の下に斃れなければならぬ道行《みちゆき》となりましたものと思います。然し其日は実際電車に清正公前より乗っておりません。赤坂へも行っていません。新宿の川安《かわやす》に行き天どんも喰べて居りません。自分は実際殺害しては居りません。自分は殺害する位なら自分の軒場下とも云うべき近所へ連れ出し殺害するような事はいたしません。其日自分は仮りに新宿に
前へ
次へ
全430ページ中303ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング