度見ました。前の日のは間違えたもので、次の日の分を警察で見ました。布片の残りと骨を見せられました。
 問 それは貞子の骨並に着用したる布類と思ったか。
 答 私としては布類の方は全然知らず、骨については貞子が平素笑った時に鬼歯が両方一個宛目立って見えました。見せられた歯に鬼歯が一本ずつ出て居ますから同人の死体と思いました。
 古我判事は息を継ぐ暇もなく翌三十日証人神戸牧師を訊問した。
 神戸牧師は支倉の妻が自己の教会員だった関係から、支倉が神学校に這入る時の保証人となったのが彼との交渉の始めで、小林貞の事件には止むなく仲裁の労を取ったのだったが、それが元で彼の自白に立会う事になり、遂には予審廷に引出されて、不愉快な訊問を受けなければならぬ事となった。本事件解決の重大な鍵の一つはこの人が握っていたと云って好い位だったので、証人として数回法廷に立たねばならなかった。人に情をかけたのが、反って仇となって、詰らぬ目に遭ったと云う訳だ。
 神戸氏は大きな口をきっとへの字に結んで、眉のあたりに不快な節の隆起を見せながら、古我判事の前に腰を下した。
 問 証人は小林貞の父より交渉あった事を支倉に申し
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