横顔を見せながら、問われるまゝにスラ/\と返辞する静子の哀れな姿を古我判事はじっと眺めていたが、やがて優しく云った。
「宜しい。今日は之だけにして置きます。では今の問答を読み聞かせます」
 書記の読み上げるのをじっと聞いていた彼女は黙って頭を下げた。彼女は印形を持っていなかったので、調書には署名をした切りで、印を押す事が出来なかった。
「宜しい」
 判事の許しの声に彼女はホッとして室を出て行った。
 古我氏はじっとその後姿を見送っていたが、やがてはっと緊張しながら、待たせてあった証人小林定次郎を呼び入れた。定次郎は日に焼けた真黒な顔に場馴れのしない不安そうな顔でオズオズ這入って来た。
 判事は彼に宣誓をさせた後、型の如く姓名年齢身分職業を問いたゞし、直ちに訊問に這入った。
 定次郎の訊問は頗る平凡で、何等新奇な事はなかった。貞の死体の鑑定の事だけをこゝに掲げて置こう。
 問 貞の体格は如何か。
 答 年の割に丈高く中肉でした。
 問 大正三年十月上大崎の古井戸より女の死体の出た事を承知か。
 答 その当時は知りませんでした。
 問 先頃其死体を埋葬地より掘り出し証人は見たか。
 答 二
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