災した火事の事情を詳細に訊問して一転して女中貞の事に這入り、徐に質問を進めて行った。
 訊問は貞が行方不明になった事に及び、当日叔父の定次郎が支倉方に、貞の行方を尋ねに来た事に及んだ。
 問 定次郎の来た月日時間は如何《いつ》か。
 答 月日を覚えません。夕方でした。其時の話に今日病院へ行くとて貞子が出て帰らぬとの事でした。私は何時退院してどこに居たか知りませんでした。
 問 其時喜平は在宅したか。
 答 其時は居りませんでした。
 問 当日喜平は何時に家を出て、何時に戻ったか。
 答 朝八時か九時頃家を出て、貞子の叔父さんが去って後戻りました。支倉の戻ったのは夕飯後ですから、七時か八時頃であったと思います。
 問 喜平は当日どこへ行ったとの話であったか。
 答 平常黙って出るので尋ねませんから、どこへ行ったか存じません。
 問 戻った時喜平の様子は変った所はなかったか。
 答 別にありませんでした。
 静子は知れるがまゝに、少しも悪びれず事実を申立てた。
 夫に対して絶対服従していた彼女は夫の犯罪には、少しも干与していなかった。全く表面的な事実だけしか知らないのだった。

 蒼ざめた
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