た。
「隠した覚えがないから考えつく訳がないです」
流石に支倉も対手が署長であるだけ、幾分言葉遣いも丁寧である。
「隠した覚えがないと云っても、そりゃいかんよ。君があの女の為に金を強請《ゆす》られるようになって、うるさがっていたと云う事は蔽うべからざる事実じゃからね。じゃ君はあの女はどうして行方不明になったと思うのだね」
「そんな事はよく分りませんが、多分叔父の定次郎がどうかしたんじゃないでしょうか」
「どうかしたとは?」
「どっかへ売飛ばしでもしたんでしょう」
「ハヽヽヽ、君は妙な事を云うね。あの定次郎と云う男は女の為に好い金の蔓にありつけた訳じゃないかね。折角の金の蔓をまさか端《は》した金で売飛ばしもしまいじゃないか。それよりも君こそあの女は邪魔者だ。病院の帰りに誘拐してどこかへ売飛ばしたのだろう」
「決してそんな事はありません」
「よく考えて御覧」
署長はじっと支倉を見詰ながら、
「君は知っている事をすっかり話して終《しま》わないうちはこゝは出られないよ。ね、聖書を盗んだ事はもう証拠歴然として動かす事は出来ないのだ。それだけで君は検事局に送られ、起訴になるに極《きま》っている
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