がすと大変だ」
 石子は苦笑いしながら、
「じゃ庭の方を頼むぜ」
 二人は裏と表とに別れて、怪漢の出て来るのをじっと待っていた。
 当もなく待っているのも随分辛くもあり、長くもあったが、当があって今か今かと待ち設《もう》けるのはそれ以上に長く辛かった。一分が十分にも三十分にも思えるのだった。四晩の辛労に肝腎の巨魁を捕える事は出来なかったが、確にその片割れと思える男を取押える事が出来るのであるから、両刑事の胸は躍っていた。それだけ一刻も早く彼の出て来るのが待たれるのだった。
 実際では三十分余り、石子刑事には三時間も待ったかと思われる頃、植込を通して玄関にほんのりと燈火《あかり》がさして、人の出て来る気配がした。渡辺刑事も早く察したと見えて、門の方へ引返して来た。
 門から出て来たのは確に先刻の男だった。風呂敷包はそのまゝ持って来たらしく、それに先刻のように抱えていない、ブラリと提げているので、半分以上二重廻しの下からはみ出していた。薄べったい角張ったものらしい。
 彼が門外へ踏み出して三、四間歩くと、待構えた石子と渡辺は左右から包囲するように彼に近づいた。
「もし/\」
 石子刑事が先
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