然し、強胆な支倉はチラと取乱した姿を見せただけで、忽ち元の憎々しい人を人とも思わぬ態度に帰った。
「そんなものは俺は知らない。貞を殺したなどと飛んでもない事を云うな」
「貞の屍体は大崎の古井戸から出て来たのだがね」
根岸は静かに云った。
「君はその時に見に行ったそうだが、どんな気持がしたね」
「大崎の古井戸から女の屍体が上がった事があった。俺はそれを見に行ったのを覚えている。然し、あれは決して貞ではない」
「そんな事はないよ。確に貞の屍体だよ」
「いや、あの上がった屍体はすっかりと腐爛していたから誰の屍体だか分りゃしない。現にあの時の検視官にも何も分らなかった筈だ」
「支倉君、君は非常に委しいことを知っているね」
「――――」
「君は何か思い当る所があったので、検視の結果に深い注意を払っていたのだろう。ね、そうだろう」
「――――」
「支倉」
耐りかねたように石子刑事が叫んだ。
「お前が古井戸の中へ女を抛り込んだ事はいかに隠そうとしても無駄な事なのだ。早く有体《ありてい》に云って終《しま》え」
「いつまでも隠し切れるものではないよ」
根岸はネチ/\した調子で続ける。
「僕も随分い
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