先刻から黙って石子の話を聞いていた署長は始めて少し微笑みながら、
「之に違いないのだね」
「はい」
 石子は署長の方に向き直った。
「之に相違ないと思います」
「うん」
 署長は満足そうに、
「白骨の寸法から見ても少女らしく思われる。宜しい、之を持って引上げよう」
 署長の命令の下に昨日の老人の白骨は元の穴に埋られ、棺の中には新たに掘出した白骨が収められた。


          曙光

 二回目に発掘して来た白骨が小林貞と判明したか、自殺か他殺か区別がついたか、その鑑定の結果は後に述べる事として、一度神楽坂署の刑事部屋を覗いて見る事にしよう。
 三尺の頑丈な戸口の外には出入する所のない、十畳敷ばかりのガランとした刑事部屋は、二方の窓から受入れる光線で割合に明るいが、誰でもこの部屋に入れられて、物凄い眼つきの荒くれ男に取巻かれて、鋭い質問を浴せかけられたら、怯じ恐れないものはないであろう。況《ま》して少しでも後暗い事のあるものは縮み上って、恐れ入るのが当然である。然し中には強情なしたゝか者があって、時には刑事達の手荒い取調べにも頑強に屈しないものがある。写真師浅田の場合はそれだっ
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