ましょうて」
 係の巡査は首を捻った。
「今日は馬鹿に古い調物があるなあ」
 隣にいた巡査がニヤ/\しながら云った。
「僕の方は三年前の仮埋葬死体の照会だ」
「え、三年前」
 耳寄りな話だと石子刑事はその巡査の方を向いて聞いた。
「どう云うんですか」
「何ね、三年前にね、大崎の池田ヶ原の古井戸から女の死体が出ましてね、身許不明で大崎の共同墓地へ埋葬したんですがね、今日或地方から照会がありましてね、親心と云うものは有難いものですね、三年前に家出したまゝ行方不明の娘があるので、どこで見たんですかね、仮埋葬の広告を見たとみえて、早速の照会なんですよ」
 三年前! 池田ヶ原! 家出娘! 何と似寄った話ではないか。
 石子刑事は胸を轟かした。
「いくつ位の娘なんですか」
「二十二、三です」
「そうですか」
 石子は落胆した。
「えーと、やっと見つかりましたよ」
 隣の巡査が声をかけた。
「支倉方より出火、半焼と之でしょう」
 巡査の指し示す所を見ると、確に石子の求める記録だった。彼はそれを写し取って外へ出た。
 世め中はだん/\春らしくなる。物持らしい家の南に向った気の早い梅は、塀越しに一輪二輪
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