だね」
「賠償する事にしたって好いさ。どうせそうザラにある訳じゃないから。新聞はそんな方ばかり書くから矢鱈《やたら》に多いようだが、そんなものじゃないからね」
「所がそうなると僕達は直ぐ成績に影響して来るからビク/\もので、碌《ろく》な検挙は出来ないぜ」
「何にしても悪い事をする奴がなくなればいゝんだがなあ」
「そうなると僕達は飯の食上げだぜ」
「ハヽヽヽ」
「ハヽヽヽ」
二人は顔を見合して笑ったが、さて現実の問題として見ると、こんな呑気な事は云っていられなかった。
「兎に角、俺が、浅田を引っ張って来よう」
根岸が云った。
「そうかい、じゃお願いしようか。僕はもう少し支倉の旧悪の方を突ついて見よう。何と云って連れて来るんだい」
「無策の策と云うか、当って砕けろと云うか、別に口実なんか拵《こしら》えないでやって見よう。対手も食えない奴だから下手な事は云わん方が好いだろう」
根岸と石子は別れ/\に白金と高輪に向った。
石子が高輪へ出かけたのは、そこの警察へ行って放火事件を委しく調べる為だった。
「さあ、無論記録にあるはあるでしょうがね、五、六年前に半焼一軒じゃ鳥渡さがすのに骨が折れ
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