子を叩き破《わ》った仁科少佐は、破れ目から手を入れて、窓を開けました。そうして、そこからヒラリと家の中に飛込みました。部屋の中は真暗です。少佐は扉《ドア》を開けて廊下に出ました。廊下も真暗です。少佐は爪先探《つまさきさぐ》りに進んで行きました。すると、不意に横から少佐目がけて、パッと懐中電灯が照《てら》されました。そうして同時に、固いものが少佐の脇腹《わきばら》に当りました。少佐はハッと驚いて両手を上げました。ピストルの筒口が横腹に突きつけられたのです。ああ少佐はとうとう敵に捕《つかま》ったのです。
「ハハハハ、よくお出になりました。私が案内いたします。さあ、お歩きなさい」
嘲《あざけ》るように云ったのはシムソンでした。さすがに間謀を勤めるだけあって、アクセントは少し変ですが、日本語はうまいものです。
仁科少佐はピストルを突きつけられて、両手を挙げたまま、前の方に押し進められました。
やがて、少佐はシムソンの居間らしい部屋の中に追い入れられました。シムソンは少佐のポケットを調べて、持っていたピストルを取り上げました。
「まあ、おかけなさい」
シムソンは前にあった椅子を指しました
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