あって、貴様の云った事が、そのまま向うへ聞えたのに気がつかないのだ。僕は貴様が先刻《さっき》云った隠し場所は出鱈目《でたらめ》だった事を知ったから、本当の事を云わそうと思って謀計《はかりごと》にかけたのだ。お父さんは地下室の牢に入ってなんかいやしない。ソーントンがお父さんを連れて行く途中で、待ち伏せていた僕は、ソーントンにピストルを突《つき》つけて、お父さんを救《たす》けて、代りにソーントンを地下室に入れておいたのだ。水で驚いて悲鳴をあげていたのは、貴様の部下のソーントンなのだ。僕はお父さんに云いつけられた通りしたのだ。僕達二人が貴様に捕ったのは、みんな計略なんだ。貴様がここでベラベラしゃべった隠し場所が本当だったら、直ぐ警視庁から合図の電話がかかる事になっていたんだ。僕は貴様に、合図があるまでしゃべらせればよかったんだ。今、警視庁から何と云って電話がかかったか、云って見ようか。書類は貴様の云った所に、ちゃんとあったと云って来たんだろう。アハハハハハ」
 道雄少年の言葉を聞いているうちに、次第次第に蒼《あお》ざめて来たシムソンは、この時、「うむ」と一声|唸《うな》って、パッタリ床の上に
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