ないが、お釈迦《しゃか》さまでも知らないだろう。アハハハハハ」
 相手を袋の鼠の、しかも子供と侮《あなど》ってか、シムソンは彼の企《たくら》みを、さも自慢らしく述べ立てました。何という狡獪《こうかい》さ。盗んだものを、警視庁に置いて平然としているとは、実に驚くべき悪智恵ではありませんか。道雄少年は旨々《うまうま》とシムソンの秘密を知る事が出来ました。しかし、直ぐに地下室に連れて行かれるのです。折角聞き出しても、何の役に立ちましょうか。
 シムソンはふと思い出したように、
「どうもおしゃべりが過ぎたようだ。地下室の水は大方腰の辺《あた》りまでになったろう。さあ、君を入れて、水を止めなければならん」
 シムソンがこう云った時に、机の上の電話器がコツコツジージーという微《かす》かな変な音を立てました。道雄少年は急に生々《いきいき》とした顔になって、受話器に手をかけて、取上げようとしました。
「こらッ、触《さわ》ってはいけない」
 シムソンは大声に叱りつけて、急いで自分で受話器を取り上げました。
「うむ」
 受話器を耳に当てたシムソンは、忽《たちま》ち真蒼な顔をして、パタリと受話器を落しました
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