び寝台に横になる。博士が再び眠りに落ちた時に或る人間は台所のメートルのコックを、元戻りに開ける。そうすれば、寝室内には盛んにガスが漏れるではないか。
この説明のうちに、やや不完全と思われるのは、博士が起き上って、扉に鍵を下すであろう事を、或る人間がどうして予期することが出来たか、又どうしてそれがなされた事を知ったかという事と、二度目に寝についた博士が、やがて起ったガスの漏出をどうして気がつかなかったかという事である。更に以前から残っている大きな疑問として、博士の死が何故僅々二時間足らずの間に起ったかという事があるが、この事実と今の後段の疑問とを結びつけて見ると、毛沼博士は恐らく、二度目に寝台に横わると、間もなく死亡し、その後でメートルのコックが開けられたものではないかと思える。瓦斯がいかにシューシュー音を立てて漏れても、既にその時に死んでいれば、気がつく筈がない。
そんな博士の死はどうして起ったか。それは簡単である。博士の死は一酸化炭素の中毒で起った事が、権威者によって、ちゃんと証明されている。だから、むろん一酸化炭素の中毒で死んだのに違いないのだ。だが、博士の死の起った時には、ガ
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