て、中から四角い紙片を取り出したが、
「又ドイツ語か」
といって、私の方を向いて、
「君、もう一度読んで下さい」
それは先刻見せられたものと、全く同じ紙質の、同じ大きさのもので、やはり丸味書体で書かれていた。
私は読んで行くうちに、サッと顔色を変えた。なんと、その紙片にはドイツ語でこう書いてあるではないか。
千九百二十二年四月二十四日を思い出せ。
ああ、そうして、之れはなんと私の生年月日なのだ!
「ど、どうしたんだ。君」
私の啻ならない様子を見て、署長は詰問するように叫んだ。
「千九百二十二年四月二十四日を思い出せと書いてあるのです。それは私の生れた日なんです」
「ふむ」
署長は疑わしそうに私を見つめながら、
「その他に何も書いてないか」
「ええ」
私は先刻警察署で同じような紙片を見せられた時には、少しも見当がつかなかったが、今はハッキリと分った。この紙片は、何者かが毛沼博士に送った脅迫状なのだ。その紙片には単に二十二年前を思い出せと書かれていたが、後の紙片にはちゃんと年月日が書かれている。而もそれが私の生年月日なのだ。前の紙片に書き加えられていた血液型のような記号は何
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