います。関係者の中で現在生存している方もあるかも知れまへ[#「へ」に傍点]んので、全部仮名にさして頂きますが、三山《みやま》という華族さんの家に起った事件でございまして、闇から闇に葬られましたものの、当時之が発表されていましたら、相馬事件以上に問題になったこっちゃろうと思うとります。
今申す二十二三年以前の秋だした。死んだ砂山さんが私を呼んで、「どうや、之一つやって見んか」ちゅう話です。「どいう事だンね」と訊きますと、「絶対秘密やが、三山子爵家が相続の事で揉めてるのや」ちゅうのです。私は吃驚《びっくり》しました。何しろ三山子爵ちゅうたら、華族仲間でも有名な金持だすからなア。砂山さんは「費用は何ぼでも出すし、成功したら一万円呉れる約束や」ちゅうて、ニヤ/\笑わはるのです。私はこいつア、余程むずかしい事やなと直感しました。
段々話を訊いて見ると、先代の和行ちゅう人が、心臓病でポッコリと亡くなって、後に和秋《かずあき》ちゅう五つになる子供がある。之が当然相続人なんだすが、和行の腹|異《ちが》いの弟に和武ちゅう人があって、この人が訴えを起した。何ちゅうて訴えを起したかちゅうと、和秋は和行の
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