士の方も頼むよ」
 といった。
 顧問弁護士の方は兎も角、仲直りが出来て大へんよかったと思った。
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 次はそれから二三ヶ月経った頃の日記だった。

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 今日二川の事をよく知っている男から、二川の細君は妊娠して、その養生の為京都の里に行っているという事を聞いた。
 僕は鳥渡意外に思った。といって、細君が妊娠した事を意外に思ったのではない。結婚後十数年経って、初めて子供の出来た例は乏しくないのだから、少しも不思議はない所《どころ》か、大変|目出度《めでた》いと思うのだが、何故二川がその事を僕に隠したのか、鳥渡解せないのだ。先年あんな事で喧嘩別れになったので、いい悪《にく》かったのか、それともその時になって発表して驚かそうというのか、どっちかだろう。道理で中々元気があると思った。
 此間会った時に、その事をいって呉れゝば、恰度僕の所も家内が妊娠中で、僕の所は初産ではないけれども、上は亡くなしているから、まア初めて見たいなもので、共に祝い合う事が出来たのに、一体どっちが先に生れるのだろう。
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 年を繰って見ると、野村が生
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