の血続きなら、君の祖父さんの弟の孫を探し出して、後を譲るより仕方がない」
 二川は暫く考えていたが、
「同族以外から養子をするには、仮令《たとえ》血続きでも、法律上の親族でなければいけないのだね」
「その通りだ」
「じゃ、君こういう方法はどうだ」と、二川は急に眼を異様に光らして、「祖父さんの弟の孫の子を、朝子の子にして届けるのだ。そうすれば血統を絶やさないで済む」
「戸籍法違反だ」
「然し、それ以外に方法がない」
「僕は顧問弁護士として、犯罪になることに加担は出来ん」
「然し、僕は法律というものは人情を無視して成立するものではないと思う。僕が二川家の血統を絶やしたくないと思うのも、無頼の重武如きに家を譲りたくないのも、無理のない人情じゃないか」
「――」
「華族でなければ、今いった子供をいつでも養子に出来るのだ。たゞ、法律上の親族でない為に――」
「僕は同意出来んよ。君がそうしたいという事には同感もし、同情するが、その事は中々難事業だよ。第一、相手の夫婦の承諾を要するし、産婆とか看護婦とか、乃至《ないし》医師にも口留めをしなければならんし、それに奥さんが承知されるかどうか、それも疑問だ
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