気持の中に、
昼も夜も浸つてゐるよ、
まるで自分を罪人ででもあるやうに感じて。
私はおまへを愛してゐるよ、精一杯だよ。
いろんなことが考へられもするが、考へられても
それはどうにもならないことだしするから、
私は身を棄ててお前に尽さうと思ふよ。
またさうすることのほかには、私にはもはや
希望も目的も見出せないのだから
さうすることは、私に幸福なんだ。
幸福なんだ、世の煩《わづら》ひのすべてを忘れて、
いかなることとも知らないで、私は
おまへに尽せるんだから幸福だ!
V 幸 福
幸福は厩《うまや》のなかにゐる
藁《わら》の上に。
幸福は
和める心には一挙にして分る。
頑《かたく》なの心は、不幸でいらいらして、
せめてめまぐるしいものや
数々のものに心を紛らす。
そして益々《ますます》不幸だ。
幸福は、休んでゐる
そして明らかになすべきことを
少しづつ持ち、
幸福は、理解に富んでゐる。
頑なの心は、理解に欠けて、
なすべきをしらず、ただ利に走り、
意気銷沈して、怒りやすく、
人に嫌はれて、自らも悲しい。
されば人よ、つねにまづ従はんとせ
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