詩と其の伝統
中原中也
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)技《わざ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)出来|栄《ばえ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#小書き片仮名ン、40−5]
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何時誰から聞いたのだつたか覚えないが、かういふことを聞いたことがある。
山奥の村に、新しく小学校が設けられる。小学校では、毎年創立記念日に学童の作品展覧会が催される。尋常五年生は毎年関東地方の地図を出品するといふことになる。最初の年には三ちやんが一等賞になる。二年目には五※[#小書き片仮名ン、40−5]ちやんが一等賞をとる。かうして五六年目頃までは、年々、一等は一等でもその一等が目に見えて立派さを加へて行くのだが、その五六年を過ぎてしまふと、一等賞の関東地方の地図は年々おんなじ位の出来|栄《ばえ》となり、もうその村が格段開けるとかなんとかしない限り、その出来栄は大体変らないといふのである。
詩も亦寔にそのやうである。最初の年の一等賞の
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