私の心は閑寂だ。
それは日曜日の渡り廊下、
――みんなは野原へ行つちやつた。
板は冷たい光沢《つや》をもち、
小鳥は庭に啼《な》いてゐる。
締めの足りない水道の、
蛇口の滴《しづく》は、つと光り!
土は薔薇色《ばらいろ》、空には雲雀《ひばり》
空はきれいな四月です。
なんにも訪《おとな》ふことのない、
私の心は閑寂だ。
お道化うた
月の光のそのことを、
盲目少女《めくらむすめ》に教へたは、
ベートーヱ゛[#底本は「ヱ」に濁点つきの1字]ンか、シューバート?
俺の記憶の錯覚が、
今夜とちれてゐるけれど、
ベトちやんだとは思ふけど、
シュバちやんではなかつたらうか?
霧の降つたる秋の夜に、
庭・石段に腰掛けて、
月の光を浴びながら、
二人、黙つてゐたけれど、
やがてピアノの部屋に入り、
泣かんばかりに弾き出した、
あれは、シュバちやんではなかつたらうか?
かすむ街の灯とほに見て、
ウヰンの市《まち》の郊外に、
星も降るよなその夜さ一と夜、
虫、草叢《くさむら》にすだく頃、
教師の息子の十三番目、
頸の短いあの男、
盲目少女《め
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