ス。
――フツフツフツ! タルチュッフ様は丸裸か。
[#地付き]〔一八七〇、七月〕
[#改ページ]
海の泡から生れたヴィナス
ブリキ製の緑の棺からのやうに、褐色の髪に
ベトベトにポマード附けた女の頭が、
古ぼけた浴槽の中からあらはれる、どんよりと間の抜けた
その顔へはまづい化粧がほどこされてゐる。
脂《あぶら》ぎつた薄汚い頸《くび》、幅広の肩胛骨《かひがらぼね》は
突き出てゐるし、短い脊中はでこぼこだ。
皮下の脂肪は、平らな葉のやう、
腰の丸みは、飛び出しさうだ。
脊柱《せすぢ》は少々赤らんでゐる、総じて異様で
ぞつとする。わけても気になる
奇態な肉瘤《こぶ》。
腰には二つの、語が彫つてある、Clara Venus と。
――胴全体が大きいお尻を、動かし、緊張《ひきし》め、
肛門の、潰瘍は、見苦しくも美しい。
[#改ページ]
ニイナを抑制するものは
彼曰く――
そなたが胸をばわが胸の上《へ》に、
そぢやないか、俺等《おいら》は行かうぜ、
鼻ン腔《あな》アふくらましてヨ、
空ははればれ
朝のお日様アおめへをうるほす
酒でねえかヨ……
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