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愛嬌のある不具者《かたはもの》=絞首台氏のそのほとり、
踊るわ、踊るわ、昔の刺客等、
悪魔の家来の痩せたる刺客等、
サラヂン幕下の骸骨たちが。
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き]〔一八七〇、六月〕
[#改ページ]
タルチュッフの懲罰
わくわくしながら、彼の心は、恋慕に燃えて
僧服の下で、幸福おぼえ、手袋はめて、
彼は出掛けた、或日のことに、いとやさしげな
黄色い顔して、歯欠けの口から、信心垂らし
彼は出掛けた、或日のことに――※[#始め二重括弧、1−2−54]|共に祈らん《オレムス》※[#終わり二重括弧、1−2−55]――
と或る意地悪、祝福された、彼の耳をば手荒に掴み
極悪の、文句を彼に、叩き付けた、僧服を
じめじめの彼の肌から引ツ剥ぎながら。
いい気味だ!……僧服の、釦《(ボタン)》は既に外《はづ》されてゐた、
多くの罪過を赦してくれた、その長々しい念珠をば
心の裡にて爪繰りながら、聖タルチュッフは真《ま》ツ蒼《さを》になつた。
ところで彼は告解してゐた、お祈りしてゐた、喘《(あへ)》ぎながらも。
件《(くだん)》の男は嬉々として、獲物を拉つてゆきまし
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