qの、厚紙《ボール》の兜は鉢合わせ。
ウワーツ、北風ピユーピユー、骸骨社会の大舞踏会の真ツ只中に!
大きい鉄のオルガンさながら、絞首台氏も吼《(ほ)》えまする!
狼たちも吠えてゆきます、彼方《かなた》紫色《むらさきいろ》の森。
地平の果では御空が真ツ赤、地獄の色の真ツ赤です……
さても忘れてしまひたいぞえ、これら陰気な威張屋連中、
壊れかゝつたごつごつ指にて、血の気も失せたる椎骨の上
恋の念珠を爪繰る奴等、陰険《いや》な奴等は忘れたいぞえ!
味もへちまも持つてるもんかい、くたばりきつたる奴等でこそあれ!
さもあらばあれ、死人の踊の、その中央《たゞなか》で跳ねてゐる
狂つた大きい一つの骸骨、真ツ赤な空の背景の前。
息《いき》も激しく苛立ちのぼせ、後脚《あとあし》跳ねかし牡馬の如く、
硬い紐をば頸には感じ、
十《じふ》の指《および》は腰骨の上、ピクリピクリと痙攣いたし、
冷笑《ひやかしわらひ》によく似た音立て、大腿骨《こしのおほぼね》ギシギシ軋らす、
さていま一度、ガタリと跳ねる、骨の歌声、踊りの際中《さなか》、
も一度跳ねる、掛小舎で、道化が引ツ込む時するやうに。
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