Cの底でポンと叩いて、
踊らしめさるゝ、踊らしめさるゝ、ノエル爺《ぢぢい》の音に合せて!

機嫌そこねた|からくり人形《パンタン》事《こと》には華車《ちやち》な腕をば絡ませ合つて、
黒い大きなオルガンのやう、昔綺麗な乙女達が
胸にあててた胸当のやう、
醜い恋のいざこざにいつまで衝突《ぶつかり》合ふのです。

ウワーツ、陽気な踊り手には腹《おなか》もない
踊り狂へばなんだろとまゝよ、大道芝居はえてして長い!
喧嘩か踊りかけぢめもつかぬ!
怒《いき》り立つたるビエルヂバブには、遮二無二《(しやにむに)》ヴィオロン掻きめさる!

おゝ頑丈なそれらの草履《サンダル》、磨減《すりへ》ることとてなき草履《サンダル》よ!……
どのパンタンも、やがて間もなく、大方肌著を脱いぢまふ。
脱がない奴とて困つちやをらぬ、悪くも思はずけろりとしてる。
頭蓋《あたま》の上には雪の奴めが、白い帽子をあてがひまする。

亀裂《ひび》の入《はい》つたこれらの頭に、烏は似合ひのよい羽飾り。
彼等の痩せたる顎の肉なら、ピクリピクリと慄へてゐます。
わけも分らぬ喧嘩騒ぎの、中をそは/\往つたり来たり、
しやちこばつたる剣客刺
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