ノやつて来たため。

何たる夢想ぞ、狂ひし女よ、天国、愛恋、自由とや、おゝ!
おまへは雪の火に於るがごと、彼に心も打靡かせた。
おまへの見事な幻想はおまへの誓ひを責めさいなんだ。
――そして無残な無限の奴は、おまへの瞳を震駭《びつくり》させた。

     ※[#ローマ数字3、1−13−23]

扨《(さて)》詩人|奴《め》が云ふことに、星の光をたよりにて、
嘗ておまへの摘んだ花を、夜毎おまへは探しに来ると。
又彼は云ふ、流れの上に、長い面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《かつぎ》に横たはり、
真《ま》ツ白白《しろしろ》のオフェリアが、大きな百合かと漂つてゐたと。
[#地付き]〔一八七〇、六月〕
[#改ページ]

 首吊人等の踊り


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愛嬌のある不具者《かたはもの》=絞首台氏のそのほとり、
踊るわ、踊るわ、昔の刺客等、
悪魔の家来の、痩せたる刺客等、
サラヂン幕下の骸骨たちが。
[#ここで字下げ終わり]

ビエルヂバブ閣下事には、ネクタイの中より取り出しめさるゝ
空を睨んで容子振る、幾つもの黒くて小さなからくり人形、
さてそれらの額《おでこ》の辺りを、古
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