tもあればお乳もあります。

小生。――牝牛等呑んでる所《とこ》へゆく。

私《わし》達はおまへの祖先《みおや》。
  さ、持つといで
戸棚の中の色んなお酒。
上等の紅茶、上等の珈琲、
薬鑵の中で鳴つてます。
――絵をごらん、花をごらん。
私《わし》達は墓の中から甦《かへ》つて来ますよ。

小生。――骨甕をみんな、割つちやへばよい。

     ※[#ローマ数字2、1−13−22]

   精神

永遠無窮な水精《みづはめ》は、
  きめこまやかな水|分割《わか》て。

※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ニュス、蒼天の妹は、
  きれいな浪に情けを含《(こ)》めよ。

ノルヱーの彷徨ふ猶太人《(ユダヤじん)》等は、
  雪について語つてくれよ。

追放されたる古代人等は、
  海のことを語つてくれよ。

小生。――きれいなお魚《さかな》はもう沢山、
     水入れた、コップに漬ける造花だの、
   絵のない昔噺は
     もう沢山。

   小唄作者よ、おまへの名附け子、
     水※[#「虫+息」、118−8]《ヒイドル》こそは私の渇望《かわき》、
   憂ひに沈み衰耗し果
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