セらう古代欧羅巴に伴《(つ)》れてゆく!

さてその後刻《あと》には月明の晩! 曠野の限りを、
赤らむだ額を夜空の下に、戦士達
蒼ざめた馬を徐《(しづ)》かに進める!
小石はこの泰然たる隊の足下で音立てる。

――さて黄色い森を明るい谷間を、
碧い眼《め》の嫁を、赤い額の男を、それよゴールの国を、
さては可愛いい足の踰越《すぎこし》祭の白い仔羊を、
ミシェルとクリスチイヌを、キリストを、牧歌の極限を私は想ふ!
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 渇の喜劇


     ※[#ローマ数字1、1−13−21]

   祖先《みおや》

私《わし》達はおまへの祖先《みおや》だ、
  祖先《みおや》だよ!
月や青物の
冷《ひや》こい汁にしとど濡れ。
私達《わしたち》の粗末なお酒は心を持つてゐましたぞ!
お日様に向つて嘘偽《うそいつはり》のないためには
人間何が必要か? 飲むこつてす。

小生。――野花の上にて息絶ゆること。

私《わし》達はおまへの祖先《みおや》だ、
  田園に棲む。
ごらん、柳のむかふを水は、
湿つたお城のぐるりをめぐつて
ずうつと流れてゐるでせう。
さ、酒倉へ行きますよ、
林檎酒《シイドル
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