フ臣下のために、
※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ニュスよ、偶には打棄《うつちや》るがいい
   心|驕《(おご)》れる愛人達を。

   おゝ、牧人等の女王様!
 彼等に酒をお与へなされ
 正午《ひる》、海水を浴びるまで
彼等の力が平静に、持ちこたへられますやうに。
[#改ページ]

 ミシェルとクリスチイヌ


馬鹿な、太陽が軌道を外《はづ》れるなんて!
失せろ、洪水! 路々の影を見ろ。
柳の中や名誉の古庭の中だぞ、
雷雨が先づ大きい雨滴をぶつけるのは。

おゝ、百の仔羊よ、牧歌の中の金髪兵士達よ、
水路橋よ、痩衰へた灌木林よ、
失せろ! 平野も沙漠も牧野も地平線も
雷雨の真ツ赤な化粧《おめかし》だ!

黒犬よ、マントにくるまつた褐色の牧師よ、
目覚ましい稲妻の時を逃れよ。
ブロンドの畜群よ、影と硫黄が漂ふ時には、
ひそかな私室に引籠るがよい。

だがあゝ神様! 私の精神は翔《(と)》んでゆきます
赤く凍つた空を追うて、
レールと長いソローニュの上を
飛び駆ける空の雲の、その真下を。

見よ、千の狼、千の蛮民を
まんざらでもなささうに、
信仰風な雷雨の午後は
漂流民の見られる
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