ニなくフランスの野に
昨日の死者が眠れる其処に、
冬よ、ゆつくりとどまるがよい、
通行人《とほるひと》等がしむみりせんため!
君等|義務《つとめ》の叫び手となれ、
おゝわが喪服の鳥たちよ!

だが、あゝ御空《みそら》の聖人たちよ、夕暮迫る檣《マスト》のやうな
※[#「木+解」、第3水準1−86−22]《(かし)》の高みにゐる御身たち、
五月の頬白見逃してやれよ
あれら森の深みに繋がれ、
出ること叶はず草地に縛られ、
しよ[#「よ」に「ママ」の注記]うこともない輩《ともがら》のため!
[#改丁]

[#ページの左右中央]
     飾画篇
[#改ページ]

 静寂


アカシヤのほとり、
波羅門《(バラモン)》僧の如く聴け。
四月に、櫂は
鮮緑よ!

きれいな靄《(もや)》の中にして
フ※[#小書き片仮名ヱ、104−7]ベの方《かた》に! みるべしな
頭の貌《かたち》が動いてる
昔の聖者の頭のかたち……

明るい藁塚はた岬、
うつくし甍《(いらか)》をとほざけて
媚薬《びやく》取り出しこころみし
このましきかな古代|人《びと》……

さてもかの、
夜《よる》の吐き出す濃い霧は
祭でもなし

前へ 次へ
全86ページ中36ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中原 中也 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング