、、繖形花顫動《(さんけいくわせんどう)》、
I、緋色の布、飛散《とばち》つた血、怒りやまた
熱烈な悔悛に於けるみごとな笑ひ。

U、循環期、鮮緑の海の聖なる身慄ひ、
動物散在する牧養地の静けさ、錬金術が
学者の額に刻み付けた皺の静けさ。

O、至上な喇叭《(らつぱ)》の異様にも突裂《つんざ》く叫び、
人の世と天使の世界を貫く沈黙。
――その目紫の光を放つ、物の終末!
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 四行詩


星は汝が耳の核心に薔薇色に涕《(な)》き、

無限は汝《な》が頸《うなじ》より腰にかけてぞ真白に巡る、

海は朱《あけ》き汝《なれ》が乳房を褐色《かちいろ》の真珠とはなし、

して人は黒き血ながす至高の汝《なれ》が脇腹の上……
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 烏


神よ、牧場が寒い時、
さびれすがれた村々に
御告《みつげ》の鐘も鳴りやんで
見渡すかぎり花もない時、
高い空から降《お》ろして下さい
あのなつかしい烏たち。

厳《いか》しい叫びの奇妙な部隊よ、
木枯は、君等の巣《ねぐら》を襲撃し!
君等黄ばんだ河添ひに、
古い十字架立つてる路に、
溝に窪地に、
飛び散れよ、あざ嗤《(わら)》へ!

幾千
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