ュふさふさのその子の髪に
無気味なほども美しい細い指をばさまよはす。

さて子供《かれ》は聴く気づかはしげな薔薇色のしめやかな蜜の匂ひの
するやうな二人の息《いき》が、うたふのを、
唇にうかぶ唾液か接唇《(くちづけ)》を求める慾か
ともすればそのうたは杜切れたりする。

子供《かれ》は感じる処女《をとめ》らの黒い睫毛《(まつげ)》がにほやかな雰気《けはひ》の中で
まばたくを、また敏捷《すばしこ》いやさ指が、
鈍色《にびいろ》の懶怠《たゆみ》の裡《うち》に、あでやかな爪の間で
虱を潰す音を聞く。

たちまちに懶怠《たゆみ》の酒は子供の脳にのぼりくる、
有頂天になりもやせんハモニカの溜息か。
子供は感ずる、ゆるやかな愛撫につれて、
絶え間なく泣きたい気持が絶え間なく消長するのを。
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 母音


Aは黒、Eは白、Iは赤、Uは緑、Oは赤、母音たち、
おまへたちの穏密な誕生をいつの日か私は語らう。
A、眩ゆいやうな蠅たちの毛むくぢやらの黒い胸衣《むなぎ》は
むごたらしい悪臭の周囲を飛びまはる、暗い入江。

E、蒸気や天幕《テント》のはたゝめき、誇りかに
槍の形をした氷塊、真白の諸
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