に可笑《(をか)》しな村童の十四五人、柱に垢をつけながら
神聖なお説教がぽつりぽつりと話されるのを聴いてゐる、
まこと奇妙な墨染の衣、その下では靴音がごそごそとしてゐる。
あゝそれなのに太陽は木々の葉越しに輝いてゐる、
不揃ひな焼絵玻璃《やきゑがらす》の古ぼけた色を透して輝いてゐる。

石は何時でも母なる大地を呼吸してゐる。
さかりがついて荘重に身顫ひをする野原の中には
泥に塗《まみ》れた小石の堆積《やま》なぞ見受けるもので、
重つたるい麦畑の近く、赫土の小径の中には
焼きのまはつた小さな木々が立つてゐて、よくみれば青い実をつけ、
黒々とした桑の樹の瘤《こぶ》や、怒気満々たる薔薇の木の瘤、

百年目毎に、例の美事な納屋々々は
水色か、クリーム色の野呂で以て塗換へられる。
ノートル・ダムや藁まみれの聖人像の近傍に
たとへ異様な聖物はごろごろし過ぎてゐようとも、
蠅は旅籠屋や牛小舎に結構な匂ひを漂はし
日の当つた床からは蝋を鱈腹詰め込むのだ。

子供は家に尽さなければならないことで、つまりその
凡々たる世話事や人を愚鈍にする底の仕事に励まにやならぬのだ。
彼等は皮膚がむづむづするのを忘れ
前へ 次へ
全86ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中原 中也 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング