ト戸外《そと》に出る、
皮膚にはキリストの司祭様が今し効験|顕著《あらたか》な手をば按《お》かれたのだ。
彼等は司祭様には東屋の蔭濃き屋根を提供する
すると彼等は日焼けした額をば陽に晒させて貰へるといふわけだ。

最初《はじめて》の黒衣よ、どらやきの美しく見ゆる日よ、
ナポレオンの形をしたのや小判の形をしたの
或ひは飾り立てられてジョゼフとマルトが
恋しさ余つて舌《べろ》を出した絵のあるものや
――科学の御代にも似合《ふさ》はしからうこれらの意匠――
これら僅かのものこそが最初の聖体拝受の思ひ出として彼等の胸に残るもの。

娘達は何時でもはしやいで教会に行く、
若い衆達から猥《わい》なこと囁かれるのをよいことに
若い衆達はミサの後、それとも愉快な日暮時、よく密会をするのです。
屯営部隊のハイカラ者なる彼等ときては、カフヱーで
勢力のある家々のこと、あしざまに云ひ散らし、
新しい作業服着て、恐ろしい歌を怒鳴るといふ始末。

扨、主任司祭様には子供達のため絵図を御撰定遊ばした。
主任司祭様の菜園に、かの日暮時、空気が遠くの方から
そこはかとなく舞踏曲に充ちてくる時、
主任司祭様には、神様の
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