ヘぶざまな赤ン坊たちの
襁褓《(むつき)》を洗つたことはない。
この手は背骨《せぼね》の矯正者、
決して悪くはしないのだ、
機械なぞより正確で、
馬よりも猶強いのだ!
猛火とうごめき
戦《(をのの)》き慄ひ、この手の肉は
マルセイェーズを歌ふけれども
エレーゾンなぞ歌はない!
あらくれどもの狼藉《(らうぜき)》は
厳冬の如くこの手に応《こた》へ、
この手の甲こそ気高い暴徒が
接唇《くちづけ》をしたその場所だ!
或時この手が蒼ざめた、
蜂起した巴里《(パリ)》市中の
霰弾砲《(さんだんはう)》の唐銅《からかね》の上に
托された愛の太陽の前で!
神々しい手よ、甞てしらじらしたことのない
我等の脣《くち》を顫はせる手よ、
時としておまへは拳《こぶし》の形して、その拳《こぶし》に
一連《ひとつら》の、指環もがなと叫ぶのだ!
又時としてその指々の血を取つて、
おまへがさつぱりしたい時、
天使のやうな手よ、それこそは
我等の心に、異常な驚き捲き起すのだ。
[#改ページ]
やさしい姉妹
若者、その眼は輝き、その皮膚は褐色《かちいろ》、
裸かにしてもみまほしきその体躯《からだ》
月
前へ
次へ
全86ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中原 中也 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング