ュギュルタ王とはならん此の者が、
いたいけなりし或る日のこと、
来るべき日の大ジュギュルタの幻影は、
その両親のゐる前で、此の子の上に顕れて、
その境涯を述べた後、さて次のやうに語つた
※[#始め二重括弧、1−2−54]おお我が祖国よ! おお我が労苦に護られし国土よ!……※[#終わり二重括弧、1−2−55]と
その声は、寸時、風の神に障《さまた》げられて杜切れたが……
※[#始め二重括弧、1−2−54]嘗て悪漢の巣窟、不純なりし羅馬は、
そが狭隘の四壁を毀《こぼ》ち、雪崩《なだ》れ出で、兇悪にも、
そが近隣諸国を併合した。
それより漸く諸方に進み、やがては世界を我が有《もの》とした。
国々は、その圧迫を逃《のが》れんものと、
競ふて武器を執りはしたが、
空しく流血するばかり。
彼等に優《まさ》りし羅馬の軍は、
盟約不賛の諸国をば、その民《たみ》等をば攻め立てた。
彼はアラビヤの山多き地方に生れた、彼は健《すこや》かに
軟風《そよかぜ》の云ふを聞けば、※[#始め二重括弧、1−2−54]これはこれジュギュルタが孫!……※[#終わり二重括弧、1−2−55]
我、久しきより羅馬の民は、気高
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