る。その背景である現代世相を如何に処理するかの見当が合理的に発見された時に、初めて油絵の技術は日本的に成長して行くのではないかとさえ私は思っている。
 もしもマチスとピカソを招待して一カ月ばかり牛込あたりの下宿屋へ美校学生とともに下宿させたとしたら、彼らはあの世界有数の技術と立体感を如何に発揚するか見ものだろうと思う。煙草盆と机と、茶色の壁紙と雨漏り地図と、桃三個並べて、日本における画家の生活をしみじみ考えるであろうかどうか。私はピカソでないので一向見当がつかないが、一度招待して描かせてみたい。案外日本の画家の方が下宿で制作するコツをよく知っていてうまいかも知れない。
 近頃面白いことには絵画材料店に静物用の壷とバック用のインド更紗の安いイミタシオンと、果実を並べる台等を売っていることである。かくしてまでも西洋館の背景を造る必要もなさそうだが、下宿屋の二階ではまったくその人体と静物の背景には困るだろうと思う。これは同情すべきである。今に裸女用マチス型ソファー、バッグ、シーツ、枕、一組何円のセットが現れ帝展風、二科御用静物セット、裸女兼用といったものが安価で売り出されるかも知れない。
 
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