して左様ではない。ただ妙な関係で絡みついて了って一と思いに殺して了う訳にも行かない処のものが生れたりなどするのである。
本当のお産だってそうだ。一年間も母親は苦しんだ上、命をかけて生み落した筈の其子は、必ず上等であるとはきまっていない。でも自分達夫婦の分身であり、母親は命をかけた関係上、実は人間よりも狸に近いものであるに拘らず、ふとんや綿で包んで大切にしている。
それを吾々他人が、一寸綿の中を覗いて見ると、全くの狸であり、昆虫であり、魚である場合が多いのだから悲しむべき事である。
殊に、不具や低能児を抱いている母親の愛情などは又格別のものであるらしい。
絵だってその通りで、私は三年間を此作品に捧げたとか私の霊魂を何んとかしたとか、私は神を見たとか云うふれ出しだから、一体どんなものが現れたのかと思って見ると神様が狸であったり、霊魂が狐であったりする場合の方が多いのだ。
もし、本当の事ばかりを不作法に云う批評家があって、命をかけて抱いているその赤ん坊を一々、おや鯛だね、おや狐でいらっしゃいます。お化けかと思ったと申して歩いたら、全くそれは一日も勤まらない処の仕事であるかも知れない
前へ
次へ
全162ページ中131ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング