。心ではいもむし[#「いもむし」に傍点]だと思っても、そこは女らしいとか、まア可愛いとか、天使の様だとか、何んとか馬鹿気た讃辞でも呈して置かねばならないものなのである。
処で私自身、全く私は命をかけつつ、そして殆んど無収入で以て、しかも日々難産をつづけ、其奇怪なる昆虫を生み落しつつあるのである。そして人間の情けなさは馬鹿な母親の如く、いもむしや狸にも似た我が子の眼玉へ接吻したりなどする事になる。
然し、私は、不幸な事にも接吻し乍らも変な顔をしていやがるなと、心の底では思っている。然しその子は何かの因縁とか因果の種とか云うべき怖ろしいものだとあきらめて抱いている次第である。
処が此の変なものを生み出す為めの難産には随分の体力が必要である。私が一番情けなく思うのはこの体力の不足である。
殊に油絵と云うものは西洋人の発明にかかる処の仕事だけあって、精力と体力とで固めて行く芸術だと云っていいかと思う位いのものである。神経の方は多少鈍くとも油絵の姿だけは出来上るものだと云って差支えない。
私は、日本人全体が西洋人程の体力を有っていない事を認めている。それは性慾や食慾に就いて考えても同様
前へ
次へ
全162ページ中132ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング